Part.01
1月21日
天気:晴れ
今日は午前中まで、すごくいい気分だった。
朝、ディクムおじさんの家の前を通ったら、廃棄された懐中電灯がゴミ箱に捨てられてた……端末にライト機能が普通に搭載されるようになってから、ここ数年こんな道具は見かけなかったな。これをばらして、新しい作品に使えないか試してみようと思った。
でもばらしてみたら、一部の部品が錆びて古くなってただけだった。すごくもったいない!だから修理して、いくつかの機能を足してみた。例えば……立体音響とかミラーボール照射機能とか。閉め切った部屋でこの懐中電灯をつければ、すぐにカラオケボックスになって歌える!
名付けて「シャイニングマイク」。これで、わたしの作品集に新しい仲間が増えた。
でもちょっと欠点が……わたしはカラオケが苦手……というか誰かに誘われたことがない。
あんまり使い道がないかも。
そして、このいい気分はお昼に台無しになった。
昼休み中、わたしはマイクちゃんに新しい機能を追加していた。
でも夢中になりすぎてたせいで、後ろの席のいじめっ子たちにマイクちゃんを奪われたんだ。
別にこんなのは今に始まったことじゃない。でもどんどんエスカレートしてる。
いつどこで、彼らに絡まれるような悪いことをしたのか全く分からない。
彼らはマイクちゃんを、時代遅れのガラクタで、わたしと同じようにダサくて役立たずのゴミだって言ってきた。
彼らの根拠のない批判には辟易する。わたしとわたしの発明を少しでも知ってれば、どれほど素敵で有能なアシスタントか分かるはずなのに。なんで彼らは理解しようとしないんだろう?
「レビュー」はどんどん悪くなる一方……わたしは我慢できなくて、作品を取り返そうと駆け寄った。
そしたら、彼らはわたしの目の前でマイクちゃんを投げ回したんだ。それは床に落ちて、外側が割れて、最初に会った時より可哀想な姿になっちゃった。
しかも床に落ちた時、再生ボタンが押されて教室がカラオケボックスに変わった。ミラーボールのライトが壁に当たって、情熱的なソプラノの歌声が響き渡る。
クラス全員が固まった。でもわたしはちょっと嬉しかった。ダメージは大したことなさそうだし、直せるはずって思ったから!それに、今ならわたしの作品の凄さを分かってもらえるとも思ったんだ。
その時、シェルドン先生が職員室から駆けて来た。ドアを開けた時の顔は、本当に面白かったな。シャイニングマイクが入りそうなくらい大きく口を開けてた。
そして当然、お決まりの「ご両親を呼んできなさい」。
今までと同じように、父さんと母さんは事件の原因とか結果には興味がなくて、シェルドン先生にわたしの成績を聞いただけだった。職員室を出た時、父さんの目には怒りが浮かんでいた。
「何度も言っただろう。こんなくだらないことをしていたら成績が悪くなると」
わたしも何度も聞いたよ。一言一句、毎回同じ。
話しながら、父さんはわたしを強く押した。その時、わたしはマイクちゃんをどう直すか考えてたから、バランスを崩して廊下の冷たい床に転んじゃった。
倒れた時、父さんはとっさにわたしを支えようとしてくれたけど、結局その手を引っ込めた……
そして父さんはシャイニングマイクを高く持ち上げて、わたしや他の先生たちの前で激しく床に叩きつけた。割れた部品がふくらはぎに飛んできて、ちょっと痛かった。
もう慣れてるはずなんだけどな。
シャイニングマイクの残骸をぼんやり見つめながら、「修復するのは無理かも」とか、「わたし以上に痛がってるかもな」って思った。
おやすみ、エウレカ。
1月22日
天気:晴れ
今日は1日中倉庫に隠れて、やっとシャイニングマイクを直せた!
でも最後の調整をしてる時、除草剤を取りに来た母さんに見られちゃった。
母さんは、何も言わずにドアを閉めて出て行った。
わたしは慌ててたから、その時の母さんの顔を見てないけど、もしかしたらがっかりしてたのかな?
でも夜ご飯は、意外にいつもより豪華だった。
ふと、ニューシティの古いことわざを思い出した。「子供相手には、棒で叩いた後に必ず飴を与えよ」。
父さんがわたしに怒るたびに、母さんはいつもわたしの好きなものをたくさん作ってくれる。
でも、わたしはもう子供じゃないのに……
夜ご飯の時、わたしがシャイニングマイクを修理してたことを母さんが話すと思ってたのに、そうはならなかった。
食べ終わった後、部屋に戻る前に、誕生日に何をしたいか父さんに聞かれた。
思わず、自分の部屋に閉じこもって発明がしたいって言いそうになった。
本当にそんなことを言ったら、父さんの怒りにまた火がつくだろう。
だから、遊園地に行きたいって言った。
遊園地に行きたいのは本当だ。あそこは子供が大好きな場所だし、発明家に何よりも必要なのは子供のような自由な想像力だから。
次の新発明がひらめくかもしれない。
父さんはわたしをちらっと見ただけで、頷いてくれなかった。
「お前はいくつなんだ。ガキみたいな幼稚なことを言いやがって。だから毎日ゴミをいじってるんだろうな。図書館に行って勉強するとか、ジェンゲ教授の経済学の講義を聞きに行くとかしろ。それがお前の将来のためになるんだ!」
その後はもう、父さんの話は耳に入らなかった。だって新しい発明のアイデアを考えてたから。
おやすみ、エウレカ。
Part.02
1月30日
天気:晴れ
今日はこっそり遊園地に行ってきた!
もともと父さんの計画では、わたしは父さんたちと一緒にジェンゲ教授の経済学講座を受けた後、図書館で勉強することになってた。
でも家を出る直前、二人は会社から連絡を受けて休日出勤になったんだ。
二人の真剣な顔を見ながら、頑張って残念そうな顔をしてたけど、心の中ではすごく喜んでた。
それで、家を出たわたしは真っすぐ遊園地に向かったんだ。
到着した時、遊園地は人でいっぱいだった!
他の子はみんな親と一緒だったから、わたしだけちょっと場違いだったけど。
でも大丈夫、一人でも楽しめる!
一人でも楽しめる!
ただ、レストランでお昼ご飯を食べてる時、わたしが一人で食事してるのを可哀想に思ったのか、店員さんが同情するような顔をしながら、わたしの向かいにクマのぬいぐるみを置いていった……
周りを見回すと、他の席にいたのは全員家族連れだった。
……一人で遊園地に行ったからって別に悲しくない。
まぁ実はその時……ちょっとだけ寂しかったんだけど。
楽しかったことも書いておく。遊園地の色んな施設で、子供たちの無邪気で純粋な笑顔が見られたこと。
将来、わたしの発明が子供たちを笑顔にできたらいいな。
今日は本当にいっぱい刺激を受けた。
バンパーカーで遊んでたら、子供たちにめまいがするほどぶつけられたけど。
ぼんやりしながら熱気球が飛んでるのを見た時、わたしは思った。バンパーカーに熱気球を取り付けて、地上を進むだけじゃなく空も飛んで、全てを見渡せるようにできたら……
わたしは自由に空を飛んで、二度と奴らの顔を見ることもない。
街の外にある砂の海も、錆の川の向こう側も見られる。
ああ、どんなに素敵だろう!
脳が今日生まれたひらめきをずっと消化してたせいで、夜ご飯を食べてる時に魚の小骨が喉に刺さっちゃった。
食べ方が雑で女の子らしくないって、父さんと母さんに怒られた。
その時、また新しいインスピレーションが湧いてきた。「自動骨抜き機」を作りたい!
明日から作ろう。
おやすみ、エウレカ。
2月11日
天気:雨
今日はご機嫌な父さんにちょっと褒められた。あのハゲ親父のシェルドンが、わたしの進歩を褒めてくれたからだ。
でも一度くらい、あのゴミを見るような目じゃなく、きちんとわたしの作品を褒めてほしかったな。
文法学の成績が先月より良くなったんだけど、絶対につまらない詩に興味を持ったわけじゃない。適当に答えたら、たまたまいつもより運がよかっただけ。
夜ご飯の時、母さんは父さんに「レインブーツは足が蒸れるから履き心地が悪い」って愚痴ってた。
だからつい、発明したばかりの「消臭通気レインブーツ」を勧めちゃったんだ。使った人はみんないいって言ってくれたから!
今まで使ったのはわたしだけだけど、これは「高評価率100%」ってことでしょ。
ただ、そう言った瞬間、自分の失言に気付いた。
案の定、父さんは今朝降った雨よりも急激に表情を変化させた。
本当に死ぬほど怖かった。父さんはまたものすごく怒って、わたしを殴るんだろうって思ったから。
でも今回はちょっと怒られただけだった。よかった、きっと成績が上がったからだ。
父さんはこう言った。
「最近成績がちょっと上がったからって調子に乗り始めたのか。勉強もしないでまたあのガラクタの山をいじってるんだな?時間ができたら、全部ゴミ箱に捨ててやる!」
やっぱり、父さんはわたしの発明の偉大さを全く理解してない。どう考えても、くだらない成績表より役立つのに。
夜ご飯の終わりに、父さんはまたいつものように説教を始めた。
「そんなに時間があるなら、もっと本を読め。それかもっと外に出た方が、部屋にこもって鉄クズの山を見ながらニヤニヤしてるよりマシだ」
わたし、ニヤニヤしてたんだ?知らなかった。
そんなことより、どうしてわたしが部屋で笑ってるのを知ってるんだろう?
部屋の鍵をレベルアップした方がよさそう。
まぁ多分、部屋に鍵をかけるなんて許してもらえないと思うけどね。
おやすみ、エウレカ。
3月25日
天気:晴れ
クラスのいじめっ子たちは、わたしの作品にあだ名をつけるだけじゃ気が済まないみたい。最近わたしにまであだ名をつけ始めた。
「ゴミ山の発明家」、「鉄クズ王」、「修理専門家」とか……他にもまだ知らない名前があるかも。
でも、わたしはあんまり気にしてない。何て呼ばれようが、返事をしないで彼らを空気みたいに扱えばいいから。
その日の午後、授業中にシェルドンに指されたけど、ちょうどブレインストーミング中で最高のアイデアを完成させてるところだった。
はっきり言って上の空だったから、何を答えればいいのか全然分からなかった。
もしこれが映画やテレビのワンシーンだったら、親友にこっそり正解を教えてもらえたんだろう。
でも残念ながら、現実にそういう友達はいない。
いるのはバカ騒ぎするいじめっ子たちだけだ。
「我らが発明家さんは、きっと天才的な設計を考えてる最中なんだ。あんな簡単な問題を考える時間なんてないんだろ?」
後ろから、誰かのわざとらしい声が聞こえた。
教壇に立つシェルドンは更に顔をしかめる。
幸い、質問に答えられなかっただけでそれほど厳しい罰はなく、廊下に立たされただけだった。
わたしにとって、座って考えようが立って考えようが、大きな差はない。
その結果、考え事に没頭しすぎて3時限も廊下に立ってた。シェルドンの罰則は1時限だけだったのに。
さすがに足が痛い!
今度は長時間立ってられるように、携帯脚装具を開発しなきゃ。絶対使うタイミングがまたあると思う……
おやすみ、エウレカ。
4月11日
天気:曇り
今日は最悪だった!
クラスのいじめっ子たちが、わたしの新発明「折りたたみ式ドライヤー」を教員室の裏にある教員用トイレに隠したんだ。モップの入ったバケツの中から見つけ出すのに何時間もかかった。
しかもやっと見つけたと思ったら、いじめっ子たちはわたしをトイレに閉じ込めてどっか行っちゃったんだ!
高学年の先生が通りかかって助けてくれるまで、2時間以上かかった。
わたしが「行方不明」になってた2時間の間、この異常事態に誰も気付いてなかったみたい!
いじめっ子たちはシェルドンに、わたしが授業をサボって発明をしたいからトイレに隠れたなんて言って!
シェルドンはなんと彼らを信じたんだ!
そしてわたしの両親は、また学校に呼び出された。
職員室から出てきた父さんも、全てわたしのせいだって決めつけてきた。
「お前がやりそうなことだろ」って言って、先生やクラスメイトの前でわたしを叱って殴った。
ああ、本当に怒りで爆発しそう。
それが父さんの頭の中にあるわたしのイメージなの?
まぁ……確かに、静かな場所で発明に集中したいとは思ってる。
でも、たとえ授業をサボって新発明に取り組むとしても、トイレは絶対に選ばない!トイレの空気環境――特に湿度と温度。
あと、空気中に舞ってる小さな汚れも、テストデータに影響するはず!
家に帰ってから、今日のことは全部いじめだって泣きながら母さんに訴えた!
でも母さんは、わたしが仲間外れにされてるのは、普段クラスメイトといい関係を築いてないせいだから反省しなさいって言った。
もっと友達を作りなさい。友達がいれば、自然といじめられなくなるって。
母さんが言うように簡単だったらいいのに。
クラスメイトたちは、わたしを理解できない。だって目に映る世界が全く違うから。
彼らはわたしの発明を理解できないし、その美しさが分からない。だからわたしたちは、別の世界の住人なんだ。
わたしを本当に理解してくれる「ソウルメイト」にいつ出会えるんだろう?
あーあ。おやすみ、エウレカ。
7月7日
天気:晴れ
今日は大学入試の日だ。
父さんも母さんも来ないだろうって思ってたのに、仕事を休んでまで受験に付き添った。
わたしの誕生日には休日出勤をしたのに、試験の時はついてくるんだね。
複雑な気持ちだった。
家を出る前、「スマートちゃん」のスイッチ近くのネジが緩んでるのに気付いて、倉庫に駆け込んでドライバーで補強した。
でもちょうどその時、家を出るよう促しに来た父さんに見つかっちゃった。
また叱られると思ったけど、「遅刻するぞ。玄関で待ってる」とだけ言われた。
父さんらしくなかったな。
試験を終えて外に出ると、父さんと母さんの顔は強張ってた。受験をした本人より緊張してたんじゃないかな。
母さんは前に出てわたしを抱き締めてくれた。その時ふと、他人の腕がとても温かいことに気付いた。
父さんも「頑張ったな」って軽く声をかけてくれた。表情や口調から少し優しくしようとしてるのが伝わってきて、なぜか緊張が一気に落ち着いた。
おやすみ、エウレカ。
Part.03
8月14日
天気:晴れ
試験の結果が出た。
いいニュースが1つと、悪いニュースが1つある。
悪いニュースは、志望校の合格ラインに6点足りなかったこと。
いいニュースは、試験前に特許による加点承認をこっそり申請してみたら、なんと!特許を5件取得したことで、試験結果に10点の加点が認められたことだ。
この2つのニュースを両親に報告する時、後者をわざと少し遅れて話した。
だから、噴火一歩手前の父さんの顔がみるみる鎮火していくのを楽しめた。その後、父さんはしばらく黙っていた。
そして最終的に、言葉を詰まらせながらこう言った。
「あまり調子に乗るなよ。そんな発明をさっさと諦めて勉強に専念していれば、6点足りないことはなかったし、もっといい大学に行けたかもしれないだろう」
それは認めざるを得ない。わたしはこの屁理屈に反論できなかった。
でも、人生に「もしも」はない。発明と創造の人生を諦めるなんて退屈すぎる。
これを書きながらふと気付いた。今回、父さんはわたしの発明を「ゴミ」と呼ばなかった。
おやすみ、エウレカ。
8月19日
天気:晴れ
今日はわたしの入学祝いが開かれた。
ディクムおじさんは、わたしの専攻を聞いてきた。
決まってるでしょ?もちろん、機械科だよ!
わたしの才能と価値を最大限発揮できるのは機械科だけ。
でも、それは心に隠さないといけない答えだ。
すぐ傍には笑顔の両親がいる。「彼らの納得のいく答え」は明白だ。
一度くらい、自由に飛ぶ熱気球になれないのかな?
「経済学科」
そう言う自分の声が聞こえた。
それはわたしの声だったけど、「わたし」じゃなかった。
熱気球は心の中で爆発し、両親や親戚たちの笑顔に変わった。
わたしは発明以外でもみんなを笑顔にすることができる。
妥協もできるんだ。
パーティーの最中、ディクムおじさんの末娘が間違ってケーキを床に落としてぐちゃぐちゃにしてしまった。
その時、壊れた「シャイニングマイク」が見えた気がした。
全然似てないのに、どうしてあんなに似てると思ったんだろう?
もしかしたら、どっちも痛みを感じてるからかもしれない。
今日は夜ご飯も食べないで、ただ布団にくるまって作品集をずっと眺めながらぼんやりしていた。
おやすみ、エウレカ。
8月27日
天気:晴れ
もうすぐ学校が始まる。
わたしは父さんに言われて、「親しい友人」を作るために、色んな新入生のグループに参加し始めた。
こういう学生同士の付き合いは、将来社会に出た時に貴重な財産になるらしい。
新入生のグループチャットにとても印象に残った人が二人いた。わたしが最近発明した太陽光発電式の「孔雀ライト」と同じくらい目を引く人たちだ。
そのうちの一人は「オスの孔雀」で、新しい女の子がグループに加わるたびに、「新入りの女子、写真見せて」と言っていた。
自動返信なんじゃないかと疑問に思ったくらいだ。
もう一人の「可愛い孔雀」は……実際に写真を送った人だった。しかも超美人。
でも今の時代、情報が偽物ってことも多い。
ちらっと見てわたしはチャットを閉じた。目の前の用事の方が大事だったから。
「シャイニングマイクmax+」に最近ちょっとした不具合が起きてるんだけど、どこが問題なのかまだ分かってない。
今日の午後は、ばらして修理することに費やした。
夜ご飯は、母さんが久しぶりに焼き魚を作ってくれたから、ちょうど完成したばかりの「自動骨抜き機」を試してみた。そしたら魚の骨と身が完璧に分離したんだ。
すごくいい感じ。
その後、骨をお皿に残して身をゴミ箱に捨てなかったら、もっと完璧だったんだけど。
ラッキーだったのは、夜ご飯を部屋に持ち込んで試せたこと。そうじゃなかったら、また父さんに小言をもらってたと思う。
おやすみ、エウレカ。
9月2日
天気:晴れ
いいことを聞いた!!!
この大学では、自分の専攻以外の授業も自由に聴講できるんだって!
それなら、経済学科の授業をサボって機械工学とか電子工学の授業を受けられる!
わたしのインスピレーションの熱気球が、どんどん空に舞い上がってく予感がするよ!
ただし、出席回数が足りないと経済学科は不合格になるみたい。
不合格はつまり留年。そうなったら父さんと母さんがまた……
まぁいいや。ニューシティには、「車が山に近づけば必ず道が開け、船が橋脚に近づけば自ずと真っすぐ進む」って古いことわざがあるしね。
わたしは思い切って経済学科の授業をサボって、機械科の授業を聴講しに行った。
飛躍的に上達するためには、やっぱりプロの先生に教わる必要がある。
インスピレーションがどんどん溢れてくるよ!
授業の後、わたしは先生を呼び止めて「シャイニングマイクmax+」の不具合とか、最近の問題点について尋ねてみた。先生は困った様子でわたしのアイデアを理解してないみたいだったけど、学術的な質問には辛抱強く答えてくれた。発明に関して学術的なコミュニケーションを取ってくれたのはこの人が初めてで、あんなに幸せを感じたのも初めてだった。
しかも教室には見知った顔があった。隣の席にいたのは孔雀ちゃん2号――
新入生のグループチャットに、本当に写真を送ってた美人さんだ。
わたしはうっかり「孔雀ちゃん」って口走っちゃった。聞こえてなかったみたいでよかったよ。
彼女は機械科の学生だったんだ。
わたしが先生に相談してる間も、彼女は隣でずっと話を聞いていた。
わたしが帰る前、彼女が話しかけてきた。ジェシーっていう名前で、「シャイニングマイクmax+」を含めたわたしの発明品たちに興味があるみたい。
彼女の目は、「シャイニングマイクmax+」のライトよりもキラキラ輝いてた。
おやすみ、エウレカ~
9月26日
天気:晴れ
今朝、ジェシーとちょっと口論になったけど、わたしたちの友情には影響ないと思う。
きっかけは、デザインコンセプトの小さな衝突だった。わたしは彼女のデザイン案が過激すぎると思ったし、彼女はわたしのアイデアが保守的すぎると思ったみたい。
実験室で大喧嘩をしたけど、外に出て食堂でご飯を食べる頃にはもう仲直りしてた。
喧嘩をしてる時、実はちょっと嬉しかったんだ。
「友達との喧嘩」は、初めての経験だったから。
……わたしたちは友達だと思っていいよね?うん、きっとそうだ!
その後、仲直りのお祝いとして完成したばかりの「足踏み扇風機」を彼女にプレゼントした。
これは、涼しさを楽しみながら健康を維持できるわたしの最新の発明だ。
彼女は真剣な顔でこう言った。
「いい?エウレカ。仲直りの記念にプレゼントを贈ろうって気持ちは分かるわ。でも信じて。扇風機の風に当たりながらペダルを踏み続けなきゃならないなんて、誰も望んでないの」
またやらかしちゃったみたい。でもその後、彼女は自分の実験台に「足踏み扇風機」を置いた。
だから……わたしのプレゼントをちょっとは気に入ってくれたよね?
おやすみ、エウレカ!
10月3日
天気:晴れ
今日ジェシーの家に遊びに行ったんだけど、あんな大きな自分の実験室を持ってたなんて!
正直言って、ものすごく羨ましい。
わたしは今までの作品を全部持って行って、彼女に一つずつ機能を紹介した。
彼女がわたしの発明品を心から気に入ってくれたのが分かった。
わたしは自分の発明品を子供のように思ってる。子供を持ったことはないけどね。
でも、それを全部をジェシーにあげた時、少しも後悔はなかった。
この20年ほどで聞けなかった褒め言葉を、今日全てもらえた気がした。
「エウレカ、あなたの才能、可能性、未来にはこれ以上のものがあるわ。私が全部発掘してあげる」
ああ、本当に素敵な言葉だな。日記を書いてる今この瞬間も、ついニヤけちゃうくらい。
ジェシーと出会ってから、全てが変わったように感じる。
これはただの美しい夢で、目が覚めたら何もかも消えちゃうんじゃないかってちょっと怖いよ。
でも、今はとても幸せ。
わたしはふと、父さんと母さんが望んでた友達を作れたんだって気付いた。
今日は初めて他の人の家で日記を書いてる。
友達の家に泊まるのも初めて。
おやすみ、エウレカ!おやすみ、ジェシー!
Fin.